音波式・回転式電動歯ブラシの違い|音波水流の効果を歯科衛生士が解説

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歯ブラシ

「電動歯ブラシを使いたいけど、音波式と回転式は何が違うの?」

「結局、どちらのほうが歯垢を落とせるの?」

電動歯ブラシを選ぶとき、迷いやすいポイントですよね。

結論からいうと、音波式と回転式にはそれぞれ特徴があります。

研究結果だけを見ると、現在は回転振動式のほうがプラーク除去や歯肉炎の改善でやや有利とする報告があります。

一方で、音波式には**「音波水流」と呼ばれる液体の流れによる作用**があり、これが音波式ならではの特徴です。

この記事では、歯科衛生士の視点から、

  • 音波式と回転式の違い
  • 音波水流とは何なのか
  • 音波水流は歯間や歯肉の周りにどう働くのか
  • 結局どちらを選べばいいのか
  • 電動歯ブラシの正しい使い方

について分かりやすく解説します。

音波式と回転式電動歯ブラシの違い

電動歯ブラシは、ブラシの動きによっていくつかのタイプに分けられます。

代表的なのが、

  • 音波式
  • 回転振動式

です。

一番大きな違いは、ブラシの動き方です。

音波式電動歯ブラシとは?

音波式は、ブラシを高速で細かく振動させるタイプの電動歯ブラシです。

厚生労働省の「e-ヘルスネット」では、音波歯ブラシを高速振動数を利用する電動歯ブラシとして紹介しており、高速振動によってプラークの付着力を弱めたり、ブラシを当てた周囲にも清掃作用が及ぶ可能性があるとしています。

そして、音波式で注目したいのが、

「音波水流」

です。

これは、単純にブラシの毛先が歯をこするだけではありません。

高速なブラシの振動によって、唾液や歯磨剤などの周囲の液体にも動きが生じます。

この液体の動きが、歯面やその周辺のプラークに作用すると考えられています。

回転振動式電動歯ブラシとは?

回転振動式は、丸型のブラシヘッドが左右に回転・反転するタイプが代表的です。

歯を1本ずつ包み込むようにブラシを当てやすく、歯面や歯肉との境目を狙って磨きやすいのが特徴です。

研究では、回転振動式はプラークや歯肉炎の改善において、音波式より良好な結果を示した研究があります。


音波式の特徴「音波水流」とは?

ここが、音波式電動歯ブラシの面白いところです。

音波水流が生まれる仕組み

音波式電動歯ブラシでは、ブラシが非常に速く振動します。

その振動によって、

ブラシの振動
↓
周囲の唾液や歯磨剤などの液体が動く
↓
液体に細かな流れやせん断力が生じる
↓
ブラシの毛先が直接触れていない周辺にも作用する可能性がある

という現象が起こります。

これを、一般向けには「音波水流」と表現することがあります。

研究では、音波歯ブラシによってブラシ周囲の液体が動く「dynamic fluid activity」や、流体力学的な作用によって、ブラシが直接触れていないバイオフィルムにも影響を与える可能性が検討されています。

音波水流は歯間にも届く?

ここは少し注意が必要です。

音波式では、毛先が直接触れていない場所にも液体の動きによる作用が及ぶ可能性があります。

そのため、

「歯ブラシの毛先が直接届きにくい部分にも、補助的な清掃作用が期待できる」

というのが音波式の魅力のひとつです。

ただし、

音波水流だけで歯間のプラークがすべて落ちるわけではありません。

実験室では、非接触でバイオフィルムが減少する現象が確認されていますが、こうした非接触作用が実際の口腔内でどの程度の清掃効果につながるかについては、研究条件によって結果が異なります。

そのため、

「音波式ならフロスや歯間ブラシはいらない」

とは考えないようにしましょう。


音波式は「毛先+音波水流」の2つで磨く

音波式の清掃をイメージするとき、

「音波水流だけでプラークを落としている」

と思ってしまうかもしれません。

でも、実際にはそうではありません。

基本になるのは、ブラシの毛先による機械的なプラーク除去です。

そこに、

高速振動による液体の動き

が加わります。

つまり、

① 毛先による機械的清掃

歯面に毛先を当て、プラークを物理的に除去します。

② 音波振動による液体の流れ

ブラシの高速振動によって、周囲の液体にも動きが生じます。

③ 周囲への補助的な清掃作用

この液体の動きによって、毛先が直接触れていない周辺のバイオフィルムにも作用する可能性があります。

この**「毛先による清掃+液体の動き」**が、音波式の特徴です。


音波式と回転式を比較するとどっちがいい?

ここは、かなり気になるところですよね。

現在の研究を見ると、回転振動式が音波式よりプラークや歯肉炎の改善で有利だったという結果が複数あります。

2026年に発表されたネットワークメタ解析では、19件のランダム化比較試験を比較。

プラーク減少について、

回転振動式 > 音波式 > 超音波式など > 手用歯ブラシ

という順位になりました。

また、回転振動式と高周波音波式を直接比較したシステマティックレビューでも、複数の比較で回転振動式が有利な結果を示しています。

そのため、現時点では、

「プラーク除去効果を研究結果だけで比較すると、回転振動式にやや分がある」

と考えるのが妥当です。

ただし、これは、

「音波式は効果が低い」

という意味ではありません。

音波式も手用歯ブラシと比較して、プラークコントロールに有利な結果が報告されています。


それでも歯科衛生士が音波式をおすすめすることがある理由

歯科衛生士として患者さんに電動歯ブラシをおすすめするとき、単純に「研究で一番だったもの」を選ぶわけではありません。

大切なのは、

その人が正しく使えて、継続できるか

です。

音波式には、

  • 手磨きに近い細長いヘッドの製品が多い
  • 歯面に沿わせやすい
  • 高速振動による液体の流れが期待できる
  • 毛先が直接触れにくい周辺にも補助的な作用が期待できる
  • 製品によっては歯肉にやさしく当てやすい

といった特徴があります。

特に、

「歯と歯ぐきの境目を丁寧に磨きたい」

「歯周病予防を意識している」

「手磨きより効率よく磨きたい」

という人には、音波式は十分魅力的な選択肢です。

 


音波式でも歯間ブラシ・フロスは必要?

基本的には必要です。

ここは歯科衛生士として強調したいところです。

電動歯ブラシは歯面のプラーク除去には役立ちますが、歯と歯の間を完全にカバーできるわけではありません。

厚生労働省も、電動歯ブラシを使用する場合でも、歯間部の清掃には歯間ブラシやデンタルフロスを使うよう案内しています。

特に、

  • 歯間が広い
  • 歯周病で歯肉が下がっている
  • 歯と歯の間に隙間がある
  • ブリッジが入っている
  • 矯正装置が入っている

といった場合は、歯間清掃用具の使い分けが重要です。

歯間ブラシとフロスはどう使い分ける?

一般的には、

歯間が狭い → デンタルフロス

歯間に隙間がある → 歯間ブラシ

がひとつの目安になります。

ただし、歯間ブラシはサイズが重要です。

大きすぎるものを無理に入れると歯肉を傷つけることがあります。

「自分はどのサイズを使えばいい?」

と迷う場合は、歯科医院で確認してもらうと安心です。


電動歯ブラシの正しい使い方

どんなに高性能な電動歯ブラシでも、使い方が適切でなければ十分な効果を発揮できません。

強く押しつけない

「しっかり磨こう」と思って、強く押しつけるのはおすすめできません。

電動歯ブラシは、ブラシそのものが動いています。

そのため、力でゴシゴシする必要はありません。

製品に押し付け防止機能がある場合は、活用するとよいでしょう。

大きく動かしすぎない

手用歯ブラシのように、電動歯ブラシを大きくゴシゴシ動かす必要はありません。

音波式なら、歯面や歯肉との境目に毛先を適切に当てて、少しずつ移動させます。

厚生労働省も、普通の電動歯ブラシや音波歯ブラシは、歯と歯肉の境目に毛先を当て、一歯ずつずらしていく方法を紹介しています。

磨く順番を決める

電動歯ブラシは、

「適当に当てているうちに終わった」

となりやすいことがあります。

右上の奥歯からスタートするなど、自分なりの順番を決めて、一周するのがおすすめです。

特に磨き残しやすい場所を最後まで残さないことがポイントです。


電動歯ブラシを使えば歯周病にならない?

これは違います。

電動歯ブラシは、プラークコントロールを助ける道具です。

歯周病の予防や管理には、

  • 毎日のブラッシング
  • 歯間清掃
  • 定期的な歯科検診
  • 必要に応じた歯石除去などの専門的ケア
  • 喫煙などのリスク因子への対応

などを総合的に考える必要があります。

電動歯ブラシを使っていても、磨き残しが多ければ歯肉炎や歯周病につながる可能性があります。

逆に言えば、自分の磨き残しやすい場所を知って、その部分にきちんとブラシを当てることがとても重要です。


音波式・回転式、どちらを選ぶ?

ここまでをまとめると、

音波式がおすすめになりやすい人

  • 手磨きに近い感覚で使いたい
  • 歯面を広く効率的に磨きたい
  • 音波水流による補助的な清掃作用にも期待したい
  • 歯と歯ぐきの境目を丁寧に磨きたい

回転振動式がおすすめになりやすい人

  • 歯を1本ずつ意識して磨きたい
  • 丸型ヘッドが使いやすそう
  • 歯面を包み込むように磨きたい
  • 研究上のプラーク除去効果を重視したい

ただし、これはあくまで目安です。

「音波式だから良い」「回転式だから良い」だけでは決まりません。

口の中の状態や磨き方、使いやすさによって適したタイプは変わります。


歯科衛生士として一番伝えたいこと

電動歯ブラシを選ぶとき、

「音波と回転、どっちが最強?」

と考えてしまいがちです。

でも、歯科衛生士としては、

「どのタイプを選ぶか」より、「どこにどう当てるか」

のほうが重要だと考えています。

例えば、

「右下の奥歯の内側にいつもプラークが残る」

「下の前歯の裏側に歯石がつきやすい」

「歯と歯ぐきの境目に磨き残しが多い」

など、人によって苦手な場所は違います。

電動歯ブラシを購入する前に、自分の磨き残しを歯科医院でチェックしてもらうのもおすすめです。

自分では「ちゃんと磨けている」と思っていても、プラーク染色をしてみると、意外な場所が赤く残ることがあります。

そこが分かれば、電動歯ブラシの使い方も変わってきます。


よくある質問

Q1. 音波水流で歯と歯の間まできれいになりますか?

音波式では、ブラシの高速振動によって周囲の液体が動き、毛先が直接触れていない部分にも作用する可能性があります。

ただし、音波水流だけで歯間部のプラークを十分に除去できるとは限りません。

歯間の清掃には、必要に応じてデンタルフロスや歯間ブラシを併用しましょう。

Q2. 音波式と回転式なら、どちらが歯垢を落とせますか?

現在の研究では、回転振動式のほうがプラーク除去や歯肉炎の改善で有利とする報告が複数あります。

ただし、音波式も十分にプラークコントロールに役立つ電動歯ブラシです。

Q3. 音波式なら歯磨き粉は必要ありませんか?

電動歯ブラシでも、フッ化物配合歯磨剤など、目的に合った歯磨剤を使用することはむし歯予防の観点から重要です。

ただし、製品によって推奨される歯磨剤や使用量が異なる場合があるため、取扱説明書も確認しましょう。

Q4. 電動歯ブラシならフロスはいらない?

いいえ。

電動歯ブラシを使っていても、歯間部のプラークが残ることがあります。

歯間ブラシやデンタルフロスを組み合わせることが大切です。

Q5. 電動歯ブラシで歯ぐきが痛くなったら?

まず、強く押しつけていないか確認しましょう。

痛みや出血が続く場合は、ブラッシング圧だけでなく、歯肉炎や歯周病など別の原因がある可能性もあります。

その場合は歯科医院で相談してください。


まとめ|音波式の魅力は「毛先+音波水流」

音波式と回転振動式には、それぞれ特徴があります。

現在の比較研究では、プラーク除去効果は回転振動式がやや有利という結果が出ています。

一方、音波式には、

高速振動によって周囲の液体を動かす「音波水流」

という特徴があります。

音波式では、

毛先による機械的なプラーク除去

に加えて、

振動によって生じる液体の流れによる補助的な作用

が期待されています。

これが、音波式電動歯ブラシの面白いところです。

ただし、音波水流だけで歯間のプラークをすべて除去できるわけではありません。

電動歯ブラシを使っていても、

歯間ブラシやデンタルフロスを必要に応じて併用すること

が大切です。

そして、最終的には、

「自分の口の中に合った電動歯ブラシを、正しい方法で毎日使えること」

が一番重要です。

電動歯ブラシ選びで迷ったら、歯科医院で磨き残しをチェックしてもらい、自分の苦手な場所に合ったブラシや清掃方法を教えてもらうのもおすすめです。

参考文献・参考サイト

  • 厚生労働省「歯みがきを助けるもの(電動歯ブラシ・歯磨剤・洗口液)」
  • Thomassen TMJ, et al. The efficacy of powered toothbrushes: A systematic review and network meta-analysis.International Journal of Dental Hygiene. 2022.
  • van der Sluijs E, et al. The efficacy of an oscillating-rotating power toothbrush compared to a high-frequency sonic power toothbrush. International Journal of Dental Hygiene. 2023.
  • 2026年 電動歯ブラシの種類別ネットワークメタ解析
  • 非接触でのバイオフィルム除去と電動歯ブラシの流体力学的作用に関するレビュー
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