大腸がんは、日本人にとって身近ながんの一つです。
国立がん研究センターの最新統計では、大腸がんの罹患数は非常に多く、男女を合わせると日本で最も多く診断されているがんの一つです。
そして、大腸がんは早期に発見できれば治療によって治る可能性が高いがんでもあります。
だからこそ大切なのが、
「症状がないから大丈夫」と思わず、定期的に検診を受けること。
特に40歳以上では、年1回の便潜血検査による大腸がん検診が推奨されています。
今回は、大腸がんの検査や予防について、できるだけ分かりやすくまとめます。
大腸がんは「症状がないうち」に見つけることが大切
大腸がんは、早期には症状がないことも少なくありません。
進行すると、
- 血便
- 便通の変化
- 便秘や下痢
- 腹痛
- 腹部の張り
- 貧血
- 体重減少
などがみられることがあります。
しかし、こうした症状が出てから検査を受けるのではなく、症状がない段階で検診を受けることが重要です。
大腸がん検診では、まず「便潜血検査」を行います。
厚生労働省は、40歳以上の人に対して、年1回の大腸がん検診を推奨しています。
大腸がんはどうやってできる?
大腸がんのすべてが同じように発生するわけではありません。
その一部では、大腸の粘膜にできた腺腫(せんしゅ)というポリープが、時間をかけてがんになると考えられています。
そのため、内視鏡検査でポリープを見つけ、必要に応じて切除することは、大腸がんの予防につながります。
ただし、すべてのポリープが将来がんになるわけではありません。
ポリープにはさまざまな種類があり、病変の大きさや形、組織の性質などによって、その後のリスクも異なります。
そのため、
「ポリープ=がんになる」
というわけではありません。
内視鏡検査で発見された病変については、医師が必要性を判断して、観察したり切除したりします。
青い色素を使うと大腸の病変が分かりやすくなることも
以前の記事では、
「かき氷のブルーハワイに使われている青色1号や青色2号を使う」
という話を書いていました。
これは少し表現を修正したほうがよい部分です。
大腸内視鏡では、病変を見つけたり、病変の表面構造を観察したりするために、色素内視鏡が使われることがあります。
代表的な色素として、インジゴカルミンなどがあります。
色素を散布することで、病変の凹凸や境界などが分かりやすくなる場合があります。
また、現在の内視鏡検査では、色素だけではなく、特殊光観察などさまざまな技術が使われています。
つまり、
「青い色をかければ、良性と悪性が簡単に見分けられる」
というほど単純なものではありません。
内視鏡医は、病変の大きさや形、表面の構造などを総合的に判断します。
必要に応じて組織を採取して病理検査を行い、詳しく調べることもあります。
「良性だから放っておいて大丈夫」とは限らない
大腸ポリープには、将来的にがんになる可能性があるものと、そうでないものがあります。
その中でも、腺腫は大腸がんの前段階となることがある病変です。
そのため、内視鏡検査で腺腫などが見つかった場合には、医師から
「切除したほうがよい」
「経過を見ましょう」
「次回は○年後に検査しましょう」
などの説明を受けることがあります。
ここで重要なのは、一度ポリープが見つかったからといって、すぐに大腸がんというわけではないということです。
また、反対に「良性と言われたから、今後ずっと安心」という意味でもありません。
病変の種類や数、大きさなどによって、次回の検査時期が変わることがあります。
まず40歳になったら「便潜血検査」
大腸がん検診の入り口になるのが、便潜血検査です。
これは便の中に血液が混じっていないかを調べる検査です。
大腸がんやポリープなどから出血している場合、便に血液が付着することがあります。
ただし、便潜血検査で陽性になったからといって、
「大腸がんがある」
という意味ではありません。
痔など、大腸がん以外の原因でも陽性になることがあります。
反対に、便潜血検査が陰性だったからといって、大腸がんが絶対にないとも言い切れません。
だからこそ、検査結果だけで自己判断しないことが大切です。
便潜血検査は1回で終わりではない
日本の自治体検診では、免疫便潜血検査2日法が基本となっています。
便潜血検査は、採便したタイミングによって血液を検出できないこともあるため、複数回の便を調べる方法が用いられています。
「1回目が陰性だったから大丈夫」
ではなく、指示された方法で2日分を提出することが大切です。
そして、検体の保存方法も重要です。
厚生労働省の指針では、採便後の検体は冷蔵保存が望ましいとされています。
ただし、具体的な保存方法や提出期限は検査キットによって異なる場合があります。
検査キットに記載された説明を優先してください。
「冷蔵庫に入れておけば検出率が上がるから、いつまでも保存しておけばいい」ということではありません。
便潜血が陽性だったらどうする?
ここは、とても大切です。
便潜血検査で陽性になった場合、
「痔のせいだろう」
「去年は大丈夫だったから」
と自己判断して放置しないようにしましょう。
便潜血陽性の場合は、精密検査として大腸内視鏡検査などが行われます。
大腸がん検診は、便潜血検査を受けて終わりではありません。
陽性になった場合に、精密検査を受けるところまでが重要です。
50歳になったら大腸内視鏡を受けるべき?
ここは、元記事から大きく修正したいところです。
「50代になったら全員が一度は大腸内視鏡を受ける」
というのが現在の一般的な大腸がん検診のルールではありません。
現在、日本の対策型大腸がん検診では、40歳以上を対象に便潜血検査を年1回行うことが基本です。
全大腸内視鏡検査については、2024年度版の大腸がん検診ガイドラインでは、一般住民を対象とした一次検診としては推奨グレードCとなっています。
一方、
- 便潜血検査が陽性だった
- 血便などの症状がある
- 大腸ポリープを指摘された
- 家族に大腸がんの人がいる
- 医師から検査を勧められた
などの場合には、大腸内視鏡検査が必要になることがあります。
自分が内視鏡検査を受けるべきかどうかは、年齢だけで決めるのではなく、症状や家族歴、過去の検査結果などを含めて医師に相談しましょう。
大腸内視鏡でポリープが見つかったら?
ポリープを切除した場合、次回の大腸内視鏡検査の時期は、ポリープの種類や数、大きさなどによって変わります。
例えば、日本消化器内視鏡学会の一般向け情報では、小さな低異型度腺腫を1~2個切除した場合、5年後の大腸内視鏡検査でもよいケースが紹介されています。
一方、よりリスクの高い病変では、3年後や1年後など、より短い間隔での検査が勧められることがあります。
そのため、内視鏡検査が終わったら、
「ポリープはありましたか?」
「病理検査の結果はどうでしたか?」
「次の検査はいつ頃がよいですか?」
と確認しておくとよいでしょう。
大腸がんは生活習慣でも予防できる?
残念ながら、大腸がんを100%予防する方法はありません。
しかし、発症リスクに関係すると考えられている生活習慣があります。
日本消化器病学会では、大腸がんの確実な危険因子として、過量の飲酒が挙げられています。
また、
- 喫煙
- 赤身肉・加工肉の摂取
- 高度の肥満
などもリスクを高める要因として報告されています。
一方、適度な運動習慣は大腸がんのリスクを下げることが確実視されています。
つまり、
「検査を受けていれば大丈夫」
だけではありません。
日頃の生活習慣を整えることも大切です。
運動は大腸がん予防にも関係する
運動にはさまざまな健康上のメリットがあります。
大腸がんについても、適度な身体活動によって発症リスクが低下することが分かっています。
「運動すると腸が動くから、大腸がんを予防できる」
という単純な話ではありません。
運動による体重管理や代謝など、複数の要因が関係していると考えられています。
まずは、
- ウォーキング
- 自転車
- 軽い筋トレ
- 日常生活で歩く時間を増やす
など、無理なく続けられる運動から始めるのがおすすめです。
アスピリンを飲めば大腸がんを予防できる?
以前の記事では、
「アスピリンを飲むと大腸がんのリスクを抑えられる」
という研究について紹介していました。
確かに、アスピリンと大腸がん予防については多くの研究があります。
しかし、
「大腸がんが心配だからアスピリンを飲む」
という自己判断はおすすめできません。
アスピリンには出血などの副作用があり、誰にでも予防目的で使用できる薬ではありません。
また、現在の大腸がん予防の基本は、アスピリンを飲むことではなく、
適切な検診+生活習慣の改善
です。
アスピリンを服用している人も、自己判断で中止・増量せず、処方した医師や薬剤師に相談してください。
大腸がん予防のポイントまとめ
大腸がん対策で覚えておきたいのは、次の5つです。
1.40歳になったら大腸がん検診を受ける
40歳以上では、便潜血検査による大腸がん検診が基本です。
2.便潜血検査は指示どおりに提出する
2日法の場合は、2日分をきちんと提出しましょう。
採便後は検査キットの説明に従って保存してください。
3.便潜血陽性なら精密検査を受ける
「痔だろう」「去年は陰性だった」と自己判断して放置しないことが大切です。
4.大腸内視鏡は必要な人が受ける
ポリープや大腸がんが疑われる場合などには、大腸内視鏡検査が重要になります。
検査の間隔は、過去の検査結果などによって異なります。
5.生活習慣も見直す
適度な運動、適正体重の維持、飲酒や喫煙などの生活習慣を見直すことも大切です。
よくある質問
Q. 大腸がんは検査を受ければ予防できますか?
大腸がんを100%予防できるわけではありません。
ただし、検診によって早期の大腸がんを発見できたり、内視鏡検査で将来がんになる可能性のあるポリープを切除したりすることで、大腸がんによる死亡を減らすことが期待できます。
Q. 40歳になったら大腸内視鏡検査を受けたほうがいい?
全員が必ず受けるというわけではありません。
一般的な大腸がん検診では、40歳以上を対象に便潜血検査が基本です。
便潜血陽性や症状、家族歴などがある場合には、大腸内視鏡検査が必要になることがあります。
Q. 便潜血検査が陰性なら大腸がんではない?
いいえ。
便潜血検査は有効な検査ですが、すべての大腸がんを発見できるわけではありません。
そのため、検診は継続して受けることが大切です。
また、血便など気になる症状がある場合は、検診結果にかかわらず医療機関に相談してください。
Q. 便潜血検査は冷蔵庫に入れたほうがいい?
厚生労働省の指針では、採便後の検体は冷蔵保存が望ましいとされています。
ただし、検査キットによって保存方法や提出期限が異なる場合があります。
必ず説明書の指示に従ってください。
Q. 大腸ポリープがあったら大腸がんになりますか?
すべてのポリープが大腸がんになるわけではありません。
ポリープの種類や大きさ、数などによって将来的ながん化リスクが異なります。
そのため、検査後は医師に「どのようなポリープだったのか」「次回はいつ検査するのか」を確認しましょう。
Q. 大腸がん予防のためにアスピリンを飲んでもいい?
自己判断では飲まないでください。
アスピリンには出血などの副作用があります。
大腸がん予防目的で服用するかどうかは、健康状態や他の病気・薬との関係も含めて、医師に相談する必要があります。
まとめ
大腸がんは、日本人にとって非常に身近ながんです。
一方で、早期発見や適切な治療によって、治る可能性が高い大腸がんもあります。
だからこそ大切なのが、
「症状がないから大丈夫」と思わず、検診を受けること。
40歳以上では、便潜血検査による大腸がん検診が基本です。
そして、便潜血検査で陽性になった場合には、放置せず精密検査を受けることが重要です。
また、大腸がんは検査だけでなく、適度な運動や飲酒・喫煙などの生活習慣を見直すことも予防につながります。
「大腸がんは怖い」と思うだけではなく、
40歳になったら検診を受ける。
まずは、ここから始めてみてはいかがでしょうか。
参考文献・参考サイト
- 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん」
- 厚生労働省「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」
- 厚生労働省「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン2024年度版の概要」
- 厚生労働省「大腸がん検診」
- 日本消化器内視鏡学会「昨年大腸内視鏡検査を受けました。今年も受ける必要がありますか?」
- 日本消化器病学会「大腸ポリープガイド」

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