日本人は睡眠時間が短い?
先日、面白いデータが紹介されていました。
日本人は、睡眠時間が短い!!
仕事や学校、通勤・通学、家事など……。
毎日やることが多くて、
「寝る時間を削るしかない」
という人も少なくないのではないでしょうか。
実際、日本では睡眠時間が短い人が多いことが問題になっています。
厚生労働省の資料でも、20~59歳では睡眠時間が6時間未満の人がかなり多く、2023年の国民健康・栄養調査でも、6時間未満の人は男性38.5%、女性43.6%でした。
「忙しいから仕方ない」と思ってしまいがちな睡眠ですが、睡眠は単なる休憩時間ではありません。
心身の健康を維持するために、とても重要な時間です。
「自分に必要な睡眠時間」は何時間?
ここで面白い研究があります。
国立精神・神経医療研究センターの研究チームが、健康な若い日本人男性を対象に、睡眠に適した環境で十分に眠れる状態をつくり、必要な睡眠時間を調べました。
参加者は20~26歳の健康な男性15人。
普段の生活では平均7時間37分ほど眠っていましたが、実験室で寝床にいる時間を長くすると、最初は長く眠り、その後、睡眠時間が徐々に落ち着いていきました。
その結果、
必要睡眠時間は平均8.41時間(約8時間25分)
と推定されました。
「やっぱり8時間半くらい必要なんだ!」
と思いますよね。
ただし、ここで大切なのが個人差です。
この研究でも、必要睡眠時間にはかなりの個人差がありました。
つまり、
「人間は全員8時間半寝ればベスト!」
という意味ではありません。
この研究は若い健康な男性15人を対象とした実験なので、女性や高齢者、さまざまな健康状態の人に、そのまま当てはめることはできません。
「6時間睡眠で十分」は本当?
人によって必要な睡眠時間は違います。
6時間で日中に眠気がなく、睡眠による休養感も十分に得られている人もいれば、8時間以上必要な人もいます。
そのため、「絶対に8時間寝なければいけない」という考え方も正確ではありません。
一方で、慢性的に睡眠時間が短い状態は、健康上の問題につながる可能性があります。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、成人は6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保することが推奨されています。
また、睡眠時間が極端に短い場合、肥満、高血圧、糖尿病、心疾患、脳血管疾患、認知症、うつ病などの発症リスクが高まることが報告されています。
だからこそ、
「忙しいから睡眠は後回し」
にするのは、できるだけ避けたいところです。
睡眠時間には「個人差」がある
では、何時間寝ればいいのでしょうか?
現在の考え方では、
「○時間が全員にとって正解」ではありません。
厚生労働省の睡眠ガイドでは、成人の場合、おおよそ6~8時間が適正な睡眠時間の基本とされ、個人差や日中の活動量などを考慮すると、8時間より1時間程度長い睡眠時間も適正な範囲に含まれるとされています。
つまり、
6時間以上をひとつの目安にしながら、自分に必要な睡眠時間を確保する
という考え方が大切です。
朝起きたときに「よく寝た」と感じられるか。
日中に強い眠気がないか。
仕事や勉強中に集中できているか。
こうした「睡眠休養感」や日中の状態も、自分に必要な睡眠時間を考えるうえで重要です。
睡眠不足は仕事の効率にも影響する
睡眠不足になると、単に「眠い」というだけではありません。
注意力や集中力、判断力などにも影響し、仕事や勉強のパフォーマンスが低下することがあります。
「睡眠時間を削って仕事を頑張る」
一見すると頑張っているように見えますが、睡眠不足によって作業効率が落ちてしまえば、結果的には逆効果になることもあります。
仕事を頑張るためにも、
まず寝る。
これも大切な自己管理のひとつなのではないでしょうか。
昔の人より、現代人の方が寝ていない?
「昔は寝る間も惜しんで働いた」
なんて言葉を聞くことがあります。
でも、現代では仕事だけでなく、通勤、学校、勉強、家事、スマートフォンやインターネットなど、睡眠時間を削る要因がたくさんあります。
現在の日本では、6時間未満の睡眠時間の人がかなり多いことが分かっています。
もちろん、自分の生活習慣を見直すことも大切です。
夜遅くまでスマートフォンを見ていたり、なんとなくネットを見続けたりして、睡眠時間を削っているのであれば、そこは見直したいところ。
でも、
仕事や通勤、学校、家事などを頑張っているのに、どうしても睡眠時間が確保できない
という人もいます。
そんな人には、
「もっと頑張って!」
ではなく、
「睡眠時間を確保することも大切だよ」
と伝えたいです。
「たくさん寝てしまった」と罪悪感を持たなくてもいい
休日にたくさん寝てしまうと、
「寝すぎた……」
「時間を無駄にしてしまった……」
と罪悪感を覚えることはありませんか?
でも、普段の睡眠時間が足りていなければ、長く眠ること自体は不思議なことではありません。
先ほど紹介した研究でも、普段より睡眠時間を長くすると、最初は睡眠時間が大きく伸び、その後、徐々に落ち着いていきました。
ただし、休日に長時間寝れば平日の睡眠不足をすべて帳消しにできる、というわけでもありません。
できるだけ毎日の睡眠時間を確保することが基本です。
睡眠と糖尿病の関係
睡眠と糖尿病にも関係があります。
睡眠時間が極端に短い場合、2型糖尿病の発症リスクが高くなることが報告されています。
一方で、睡眠時間が長ければ長いほど健康になるというわけでもありません。
2026年の米国糖尿病学会の基準でも、睡眠時間と2型糖尿病の発症にはU字型の関連が示されており、短すぎる睡眠だけでなく、非常に長い睡眠についてもリスク上昇との関連が報告されています。
つまり、
「とにかく長く寝ればいい」ではなく、自分に必要な睡眠時間を確保すること
が大切です。
睡眠薬「ベルソムラ」はどんな薬?
この記事を書いた当時、睡眠薬として「ベルソムラ」が紹介されていました。
ベルソムラの有効成分はスボレキサント。
「オレキシン受容体拮抗薬」という種類の睡眠薬です。
オレキシンは、覚醒を維持する働きに関わる神経伝達物質です。
スボレキサントは、オレキシンが作用する受容体を阻害することで、覚醒を維持する仕組みに働きかけ、睡眠を促します。
従来から使用されてきたGABA系の睡眠薬とは異なる作用機序を持つことが特徴です。
「副作用が少ない薬」と言い切っていい?
ここは、昔の記事から修正しておきたいところです。
以前の記事では、
「睡眠に関わる部分だけに作用するので、副作用が少ない」
という説明をしていました。
しかし、これは少し単純化しすぎています。
スボレキサントにも副作用があり、添付文書には傾眠などが記載されています。また、誰にでも適している薬というわけではありません。
そのため、
「従来の睡眠薬とは異なる仕組みで働く薬」
と理解するのがよいでしょう。
睡眠薬は自己判断で増減・中止するものではなく、使用する場合は医師や薬剤師に相談することが大切です。
睡眠薬で糖尿病を治せる?
以前の記事では、
「オレキシン受容体拮抗薬によって深い睡眠が得られ、糖尿病の数値が改善した」
という内容を紹介していました。
睡眠と糖代謝には確かに関係があります。
また、スボレキサントについても糖代謝への影響を調べる研究が行われています。
しかし、ベルソムラは糖尿病の治療薬ではありません。
実際、スボレキサントを糖尿病患者に使用して血糖への影響を調べる研究が行われていますが、睡眠薬を糖尿病治療薬として考えることはできません。
大切なのは、
「睡眠をしっかり確保することが、健康な生活の土台になる」
ということだと思います。
睡眠は「削るもの」ではなく「整えるもの」
仕事が忙しい。
勉強がある。
家事が終わらない。
スマートフォンを見ていたら、いつの間にか夜中になっていた。
そんな毎日を送っていると、睡眠時間は簡単に削られてしまいます。
でも、睡眠不足が続けば、日中の眠気や集中力低下だけでなく、さまざまな健康上のリスクにもつながります。
だから、
「寝る時間がもったいない」
ではなく、
「寝ることも健康のために必要な時間」
と考えてみてほしいです。
8時間半という数字を全員の目標にする必要はありません。
6時間以上をひとつの目安にしながら、自分に必要な睡眠時間を確保する。
そして、朝起きたときの休養感や日中の眠気にも目を向ける。
それが、今の睡眠の考え方です。
たっぷり眠った休日も、
「寝すぎちゃった……」と罪悪感を持たなくても大丈夫。
まずは、自分の体に必要な睡眠時間を大切にしてみましょう。
まとめ
- 日本では睡眠時間が短い人が多い
- 成人はまず6時間以上を目安に睡眠時間を確保する
- 必要な睡眠時間には個人差がある
- 8時間半は、若い日本人男性を対象とした研究で得られた「平均値」であり、全員に必要な時間ではない
- 睡眠不足は、生活習慣病や日中のパフォーマンス低下と関連する
- 睡眠薬には

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