以前から、歯科衛生士や歯科助手の給料って、なかなか上がらないな……と思っていました。
そんな中、2024年6月から始まったのが**「ベースアップ評価料」**です。
医療現場で働く人の賃上げを目的として、診療報酬に「ベースアップ評価料」を新設し、その収入をスタッフの賃金改善につなげようという制度です。
「お、ついに歯科衛生士の給料も上がるのか?」
と思った歯科衛生士さんも多かったのではないでしょうか。
そもそも「ベースアップ評価料」って何?
2024年度の診療報酬改定では、医療従事者の賃上げを目的としてベースアップ評価料が新設されました。
政府は、2024年度に2.5%、2025年度に2.0%のベースアップを目指していました。
診療報酬に上乗せすることで、医療機関が得た収入をスタッフの賃上げに充てる仕組みです。
歯科診療所では、**「歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)」**などが設けられました。
2024年度の歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)は、初診時10点、再診時等2点、歯科訪問診療時には41点または10点という設定でした。
そして重要なのが、
ベースアップ評価料によって得られた収入は、職員の賃金改善に充てる必要がある
ということです。
つまり、単純に「歯科医院の売上が増えるための加算」というわけではありません。
じゃあ、歯科衛生士の給料は実際に上がったの?
ここが気になるところです。
厚生労働省が公表した資料によると、2024年度にベースアップ評価料を届け出た医療機関について、歯科衛生士のベア等による賃金増率は**加重平均3.22%**でした。
ただし、これはベースアップ評価料を届け出て、実績報告の対象となった医療機関についての数字です。
すべての歯科衛生士の給料が3.22%上がったという意味ではありません。
つまり、
「診療報酬で賃上げのためのお金が用意された」
ことと、
「自分の給料が実際に上がった」
ことは、同じではないということです。
厚生労働省「令和6年度ベースアップ評価料届出医療機関の賃金増率(実績値)」
「じゃあ、強制力はないの?」と思ってしまう
私が歯科衛生士として働いていて感じるのは、
「診療報酬が上がった=スタッフの給料が同じように上がる」ではない
ということです。
ベースアップ評価料は、歯科医院が届出をして算定する必要があります。
そして、算定した場合には、その収入を賃金改善に充て、実績を報告する仕組みになっています。
そのため、
「院長がベースアップ評価料のお金を全部自由に使って、スタッフの給料は一切上げない」
という制度ではありません。
一方で、すべての歯科医院に対して一律に「歯科衛生士の給料を○万円上げなさい」と直接命令する制度でもありません。
ここは少し分かりにくいところです。
2026年6月から、さらに制度が変わりました
そして、この記事を書いている2026年現在、もう一つ大きな動きがあります。
2026年6月の令和8年度診療報酬改定で、ベースアップ評価料がさらに見直されました。
歯科では「歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)」について、初診時21点、再診時等4点、歯科訪問診療時66点または11点へと見直されています。
さらに、継続して賃上げに取り組んでいる歯科医院については、より高い点数が設定されています。
また、これまでよりも対象となる職員の範囲が広げられています。
そして、令和9年6月以降には、さらに段階的な引き上げも予定されています。
それでも「給料、上がってないんだけど……」
ここからは、完全に私個人の感想です。
私は以前、東京から地方に引っ越してきました。
そこで感じたのが、歯科医院の職場環境や給料の地域差です。
東京では比較的、法令遵守や職種ごとの業務範囲について厳しく考えている歯科医院も多い印象があります。
一方で、地方の歯科医院では、
「これ、歯科衛生士の仕事なの?」
と思うような仕事まで任されることもあります。
もちろん、これは地域や医院によって大きく違います。
地方だからすべて悪い、東京だからすべて良いという話ではありません。
ただ、私自身は地方に来て、
「こんなに給料が違うのに、やっている仕事は同じなの?」
と思うことがあります。
しかも、歯科衛生士は国家資格です。
歯周病の管理、スケーリング、SRP、TBI、メインテナンスなど、専門的な知識と技術が必要です。
患者さんと長時間接することも多く、歯科医師より患者さんの生活やセルフケアについて詳しく知っていることだってあります。
それなのに、
「国家資格を持って、こんなに仕事しているのに、この給料……?」
と思ってしまうこともあります。
歯科助手さんの待遇も、もっと評価されてほしい
そして、歯科衛生士だけではありません。
歯科助手さんも、歯科医院を支えてくれる重要な存在です。
受付、診療準備、器具の準備・片付け、診療のアシスタント、患者さんへの対応など、医院によっては本当にたくさんの仕事をしています。
中には、
「この人がいないと医院が回らない」
というくらい仕事ができる歯科助手さんもいます。
それなのに、経験や能力に関係なく、最低賃金に近い給料……。
これはちょっとかわいそうだなと思います。
頑張っている人、能力の高い人には、それに見合った評価をしてほしい。
これは歯科衛生士として働いていて、私が強く感じることです。
「医者ばかり儲かる仕組み」に見えてしまう?
歯科医院の院長先生が高級車や不動産などの資産を持っているのを見ると、
「スタッフの給料はなかなか上がらないのに……」
と思ってしまうこともあります。
もちろん、医院経営には人件費だけでなく、家賃、設備費、材料費、技工料、光熱費、税金など、さまざまなコストがあります。
また、個人の資産についても、それだけで「儲けすぎ」と判断できるものではありません。
なので、
「院長が儲かっている=スタッフに給料を払っていない」
と単純に考えることはできません。
ただ、それでも現場で働く側からすると、
「診療報酬が上がったのなら、その分を現場のスタッフにも還元してほしい」
と思ってしまうのが正直なところです。
2026年の診療報酬改定で、今度こそ変わる?
2026年6月からは、ベースアップ評価料がさらに見直されました。
厚生労働省は、令和8年度に3.2%、令和9年度にもさらに3.2%の賃上げを目指す方針を示しています。
さらに、歯科外来・在宅ベースアップ評価料についても、2026年度・2027年度に段階的な評価が行われます。
制度としては、以前よりも「スタッフの賃上げを後押しする仕組み」になってきています。
ただし、最終的に現場の給料としてどれだけ反映されるのかは、歯科医院の経営や賃金改善の実施状況によっても変わります。
だからこそ、
「診療報酬が上がったから、歯科衛生士の給料も上がるはず」
ではなく、
「診療報酬の賃上げ分が、実際に働いているスタッフへきちんと還元されているのか」
というところまで見ていく必要があるのではないでしょうか。
歯科衛生士も歯科助手も、歯科医院を支えている大切なスタッフです。
専門的な仕事をしている人が、それに見合った待遇を受けられる歯科業界になってほしい。
地方で働く歯科衛生士として、そんなことを思っています。


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